最新情報から健康・しつけ対策まで−ペットお役立ち情報
---------------------------------------
三浦照美(みうら てるみ)/1957年沖縄生まれ。
1980年麻布大学(旧麻布獣医科大学)卒業。
現在、三浦動物病院院長。天秤座のAB型。
家族は妻、子ども2人(高2男・中3女)、猫2匹
(アメショーと体に障害のある日本猫)。
診察のモットーは
「ペット(動物)にやさしく、飼い主(人)に厳しく!」
---------------------------------------

食欲の秋がやってきました
あなたのペット、太りすぎていませんか?

まずは!肥満って どんな状態?
 「肥満」とは体脂肪が過剰な状態のこと。適正体重の15%を超えると、動物の健康上、さまざまな問題が生じてくるため、「肥満症」と呼ばれています。
 しかし「肥満=病気」という認識は、飼い主の間ではまだまだ薄いのが現状。「少しくらい太ってるほうがかわいい」とか「食欲があることが健康のしるし」などと思っている人も多いのでは?
 肥満は病気ではないという意見もありますが、多くの病気の「原因」になっているのは事実。というわけで、今回は肥満について考えてみましょう。


 いったいなぜ太りすぎてしまうのか?
 肥満を防ぐには、まず原因を知るべし!
 肥満の原因は、過食を引き起こす一部の病気(後述)にかかっている場合を除いて、ほとんどが食べ過ぎ(主食以外のものの食べ過ぎ)によるものです。
 動物は人間と違って、退屈のあまり食べ過ぎるとか、ストレスでヤケ食いするなどということはありません。また、太っているのは運動不足のせいだと考える飼い主も多いようですが、動物はカロリー消費が減少すると、食べる量 も減ってくるもの。つまり、仮に運動不足の状態にあるとすれば、お腹も空かないというのが正常な姿なのです。
 食用の家畜は別として、肥満の野生動物なんて見たことないでしょう?
 ということは、ペットの食生活に原因がある、つまり肥満の原因はほとんど飼い主にあるということです。
 ちなみに、過食を引き起こす病気としては、甲状腺機能低下症、副腎機能亢進症、糖尿病などが考えられます。この場合は、病院で治療するしかありませんので、「最近、ペットの食欲が急に増加した」とか「ダイエットをさせたほうがいいかな」などと感じたら、まずはかかりつけの獣医師に相談しましょう。
 また病気ではありませんが、避妊、去勢手術後も、脂肪代謝率が変化するので、摂取カロリーを減らしてやらないと太りやすくなります。

 関節疾患、皮膚病、心臓、肝臓…
 肥満を放っておくとあちこちの具合が悪くなる!?

 肥満はいろいろな病気の原因になるため、ペットの快適な生活を害し、寿命さえも縮める危険性があります。では、いったいどういった病気を引き起こしてしまうのでしょうか。
 まず、重くなった体を支えなければならないために起こる椎間板ヘルニアなどの関節疾患。ペットの肥満は体だけに現れ、手足はほとんど太らないのです。とくにダックスフンドやコーギーのように脚の短い犬種は、物理的に体重が増えるとそれだけ脚や腰にかかる負担も大きくなってしまうので、注意が必要です。
 それだけではありません。皮下に溜まった脂肪は熱の放散を妨げるので、暑さに弱くなり熱中症になりやすくなります。皮膚も過敏になり、ちょっとしたことでも湿疹ができてしまいます。
 肝臓に脂肪がつくと脂肪肝になり、機能が低下し悪化すると、肝硬変から肝臓ガンという最悪のパターンに移行します。さらに脂肪の増加は、血液の粘度を増し循環障害も起こし、心肥大、弁膜症等の慢性の心臓病にもなりやすくなります。
 これらの病気の治療には手術という選択もありますが、麻酔を使う場合、脂肪の中に麻酔薬が分散して吸収を阻害し、効きにくくなります。そのため麻酔の投与量 が増えて、「効きにくくて醒めにくい」というとても危険な状態になり、手術の妨げになってしまうこともあるのです。
 肥満は放っておくと大変なことになるということがおわかりですね。


 肥満はどうやって防げばいいの?
 もし肥満症になったらダイエットはどうするの?
 人の場合も太るのは簡単なのに、痩せるのは難しいですよね。世の中には、ダイエットと名のつく食品、器具、書籍などが数え切れないほど出ていますが、それでもなお毎年新しい商品が出てきます。痩せるのがいかに大変であるかを示していますね。人が痩せるのもこれだけ大変なのですから、痩せようという意思のないペットには、さらに困難なことです。  飼い主自身も、ペットの肥満がよくないことはわかっていると思います。それでもダイエットがなかなか成功しないのは、飼い主の心の弱さに原因があります。
 ペットの楽しみである「食べること」を厳しく制限するのは、とても辛いことです。しかし、よく考えてみてください。ペットは自分の意志で太ったわけではありません。大切なペットが病気になる前に、心を強くしてチャレンジしましょう。
 では、具体的な方法を考えてみましょう。まず食卓にペットを連れている人はすぐにやめること。一緒にいるとどうしても何か与えてしまうし、少しくらいなら大丈夫という考えが偏食の原因になるからです。肥満の対策としては、人と同じように、摂取カロリーを減らして運動による消費カロリーを増やすのが原則です。しかし、運動で痩せさせるのはほぼ不可能なので、食餌で調整するしかありません。
 1日の摂取エネルギー(おやつも含む)は「体重×30+70」キロカロリー(kcal)。この計算式を、与える量 の目安としてください。
 もし家庭で手作りのフードを食べさせる場合には、栄養バランスが偏らないように細心の注意を払うこと。バランスよく、という意味では、市販の低カロリー食がいいと思います。ペットショップや動物病院で販売していますし、今は種類も豊富なので、相談してみましょう。
 減量の手段はいろいろありますが、ペット自身が肥満を治そうとすることはありえないので、結局は飼い主の強制的な食餌管理が唯一の方法となります。
 さて、長い間、肥満について説明しましたが、ダイエットは強制ではありません。なぜならペットにとって「食べる」という行為は、生活の中で最大の楽しみかもしれないからです。それを制限してでも健康で長生きするほうが幸せなのだろうか?…と考えると、人それぞれ答えが違うかもしれません。しかしペットの健康を考えるなら、肥満にさせてしまったときは、急がず少しずつ、ダイエットをさせるとよいでしょう。

 (「猫吉犬吉」2001.11月号)