ヒマラヤ山系が雄大に広がるネパール。ヒマラヤのトレッキングを楽しむために世界中から人々が集まってくるネパールの街々では、ほとんどの犬がつながれることなくの街中を歩き回っています。
道路をうろうろしている犬がいれば、店先で横たわって昼寝をしている犬もいる。人々も犬たちを追い払うこともなく、自然に暮らしている。犬たちにとって<天国>かとも思えますが、そこには、<狂犬病>という大きな問題があります。
日本では、<狂犬病>は、名前こそ知られていますが、現在では、ほぼ撲滅されたといってもいい病気となっています。1950年に「狂犬病予防法」が施行され、イヌの登録と毎年の予防注射が法律で義務づけられ、飼い犬の登録制度や予防接種の徹底が行われた結果、1957年を最後に発生していません。
でも、世界の国々では依然として狂犬病が蔓延しているのが実情です。ネパールもそんな国のひとつで、人口約2500万人のうち、年間少なくとも150〜200人が狂犬病で死亡しています。
ネパールの首都カトマンズでは、人口約65万人に対して約5万頭の犬がいるといわれ、昼間は街の中でゴロゴロ昼寝をしたり、うろうろしたりしている温和な犬たちですが、「夜の野良犬は昼間とは違う。歩いていたら襲われる。非常に危険」だと言われています。
狂犬病は発症すれば致死率100パーセントという恐ろしい病気です。犬をしっかりと管理すると同時に、犬に狂犬病ワクチンを接種できればいいのですが、貧しい国々ではそれもままなりません。ワクチンはタダではありません。
ネパールの人たちにとって、狂犬病は大きな問題です。
ちょっとしたきっかけから、加藤さんたちは、ネパールで狂犬病を撲滅するために無料のワクチン接種を計画しているNGO『全国人畜共通伝染病&食品衛生リサーチセンター』と出会います。そして、このNGOが資金難で行き詰まっているということを知り、日本で支援しようと、NGO『ネパールに狂犬病ワクチンを送る会』をつくることとなりました。
いろいろな活動を展開するうちに、昨年8月に、オランダのインターベット社からワクチンの寄付をしてもらえることになり、寄付金も集まったことで、昨年12月に第1期ワクチン接種事業を実施することができることになりました。 |

オランダのインターベット本社から、アジア地域担当のカンター氏が来日。ワクチン寄付に尽力してくれた |
12月3日のバクタプール市での犬244匹、猫5匹への接種を皮切りに、今年1月までに8市町村で接種を行いました。初めての接種活動支援に参加するために、『ネパールに狂犬病ワクチンを送る会』メンバーとして加藤さんほか6名が参加。現地スタッフのみなさんのワクチン接種を手伝いに出かけました。

みんなが楽に来られるよう接種会場は毎日場所を変えて行われた。ここは卓球場 |

犬を抱いてくる人が多かった。ペットの犬は、とてもおとなしい |
獣医師ほか現地のスタッフたちが、個人が飼っている犬、近所の人たちみんなで飼っている犬(地域犬)にはもちろん、本当の野良犬も捕獲して狂犬病ワクチンを接種。第二期の接種事業として、2月の下旬から4月初旬にかけて、大都市カトマンズ市での接種が実施される予定です。

ネパールの獣医師と日本の獣医師がイヌの注射 |

この犬はコミュニィティドッグ(地域犬)。この人は、次々と違うイヌを連れてきていた |
日本では、毎年ワクチンを接種しますが、アメリカやフランスのワクチンの場合は2〜3年に1度の接種となっています。いずれにしても、ネパールでのワクチン接種は、1度接種して終わり、ということにはなりません。
ネパールという国が豊かになって自力でワクチン接種ができるようになるまで、また、犬の管理制度がしっかりと整うまで、同NGOは、ネパールのワクチン接種活動を支援していく計画だといいます。

今回、接種を行った面々。ネパール側の役所の人や、獣医師たちも皆、ボランティア |
ネパールに狂犬病ワクチンを送る会』のホームページへ
http://www5a.biglobe.ne.jp/~nepal-am/
| 豆知識コラム1 |
<狂犬病ってどんな病気?>
人間を含むすべての温血動物の中枢神経におこる恐ろしいウィルス感染症。有史以来、世界中に蔓延する恐ろしい人畜共通伝染病で、WHOの報告では毎年世界で3万5千〜5万人以上もの犠牲者がでている。
感染した動物に噛まれると唾液中のウィルスが傷口から侵入する。潜伏期間は短くて10日、長い場合一年以上。発症すると興奮・麻痺・意識障害を経て死に至る。
| 狂犬病と「犬」がつくが、感染源はいろいろな動物たち |
| 都市型狂犬病 |
イヌネコがおもな感染源。
犬型狂犬病とも言う。町の中を歩きまわる犬の多い発展途上国都市部に多く人が噛まれる確率が高い。カトマンズの狂犬病も、この都市型。 |
| 森林型狂犬病 |
野生動物がおもな感染源。
キツネ、アライグマ、スカンク コヨーテ、コウモリに蔓延。欧米などの先進国を含め世界に広く分布している。 |
| コウモリ型 |
狂犬病コウモリがキャリアーとして保有している狂犬病。 |
<世界の狂犬病事情>
現在、狂犬病の発生が見られない国は、日本、台湾、キプロス、シンガポール、アイスランド、スウェーデン、ノルウェー、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島。そのほかの国々では、現在、狂犬病の撲滅対策をとっているが、完全な撲滅には至っていない。 |
| 豆知識コラム2 |
<ネパールのワクチン接種活動を支援することになったいきさつ>
| 『ネパールに狂犬病ワクチンを送る会』は、「ヒトと動物の関係学会」のメンバーたちが核になって作られたNGO。同学会の会長、東大農学部長・林良博氏の古い友人Dr.ジョシが、ネパールの狂犬病コントロールを進めていたNGO「National
Zoonosis&Food Hygiene Research Center(全国人畜共通伝染病&食品衛生リサーチセンター)」代表だったことが縁で、1998年6月、加藤由子さんは、林氏らとともにネパールへ行きDr.ジョシに会う。 |
| 「ワクチン接種をすれば狂犬病は減る。だけど資金難で行き詰まったまま。ネパールはワクチンを製造していないので外国から買うしかないが、
そのお金が国にもない」とDr.ジョシから聞き、「何とか協力できないものか」と同NGOを結成した。 |

Dr.ジョシ来日。東大農学部での会議の風景 |
ネパールに狂犬病ワクチンを送る会』のホームページへ
http://www5a.biglobe.ne.jp/~nepal-am/
郵便振替 00100−3−76161
「ネパールに狂犬病ワクチンを送る会」 |
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