●動物の世話を通じて、思いやりを学んで欲しい

親しみやすいキャラクターで人気の、ガッツ石松さん。インタビューの場所に連れてきたのは、猫のその名もズバリ「ネコ」ちゃん。ご自宅ではあと犬が1匹、セキセイインコが1羽、カメ が2匹と、たくさんのペットと暮らしています。

「うちの子たちは、ほとんど捨てられていたんだよ。犬のゴン太は7年前に河原で見つけ、放っておけなくて連れて 帰ってきた。逞しく育って欲しいと思って強そうな名前にしたんだけど、実は女の子だった(笑)」

 ゴン太はすぐ、ガッツ家の人気者になりました。それから1年後、現在は歌手として活躍中の愛娘、佑季さんが猫を拾って来たのです。その猫は、栄養失調と病気で、とても弱っていました


「正直言って困ったな、と思いました。だってうちには、ゴン太がいるんだもん。しかもその猫は、命が助かるかど うかわからない状態だったですから」
 でも同時に、子どもが動物をかわいがる気持ちは大切にしたいという思いもありました。


「動物を飼うというのは、簡単なことではないでしょ。相手が何を求めているかを察して、面倒見なくてはいけないし。動物と暮らしていると、そういう思いやりの気持ちが生まれくるんだよね。情操教育にもなるな、と考え、きち んと面倒を見ることを条件に、猫を飼うことを許したんです」


楽しそうにエピソードを
話すガッツさん
●動物を飼える大人になりたかった

 しかし動物を飼うのは、お嬢さんの教育のためばかりではありません。ガッツさんの夢でもあったのです。

「子どもの頃から僕は動物が好きで、よく犬を拾ってきたものです。まだドッグフードなんてない時代だから、エサは人間の食事の余り物。だけど当時は日本中が貧しくて人間の食べ物も不足していたから、犬の食事にまで手が回ら なかった。だから僕が犬を拾ってくると、親が捨ててしまってね。仕方ないと思いながらも悲しかった。それで“大人になったら、動物が飼える人間になろう”って決めたんです」

佑季さんが拾ってきた猫は“ネコ”と命名。ガッツさんはネコを、ゴン太に預けてみました。
「アイツはネコの全身をなめてあげ、よく面倒をみましたよ」
 


チャームポイントは、ふっくらした尻尾!

 ガッツさんや佑季さんも懸命に看病しました。その甲斐があって、ネコは次第に元気を取り戻したのです。


「それからゴン太とネコは、大の仲良し。ネコはゴン太の犬小屋で寝起きしているんだよ(笑)。他の子たちも、仲 良しだね。家を留守にしても、ゴン太やネコが、セキセイインコのピーちゃんのカゴを襲うことはないし。カメは、 どちらの名前もカメっていう名前。“噛め”と言っても噛まな いけど(笑)。彼らはいつもマイペースだよね。とにかくみんな、いいコたちばかりだよ」
 

 我が子を自慢するように、満面の笑顔を見せてくれます。

●しつけは厳しく、遊ぶときはやさしく
 ガッツさんは無類の動物好きですが、甘やかしはしません。人間と動物はきちんと区別する必要があると、考えています。

「どのコも、厳しくしつけました。人間がボスだということを、分からせないとダメ。とくに悪いことをしたら、し っかり怒らなくては。その代わりほめるときや遊ぶときは、思いっきりかわいがる。そうすると、みんなうれしそう な顔をするね(笑)。そうやって、いいコになって行くんだ。よく言われることだけど、動物のしつけは、まさに子育てと同じだよね」
 

 動物の世話は、家族で役割分担しています。ガッツさんが教育係なら、佑季さんは獣医担当。昨年10月、15年間飼っ ていた犬のチャボが亡くなったときも、 「娘が医者に連れて行ったり薬を飲ませたり、一生懸命やっていましたよ。チャボは人間でいうと90歳になるってい るから、大往生だよね。あの子、幸せだったんじゃないかな」
 

 ネコを飼うときに交わした“責任持って面倒を見る”という約束は、今もしっかりと守られています。 


ガッツさんに叱られると、プイと横をむいて
しまうとか
●聞いているんだか、いないんだか

 動物たちには、その日あったことや考えていること、ときには小言を聞いてもらうこともあるといいます。

「熱心に話しても、みんな返事すらしない(笑)。それでも言っていることの1/3くらいは、わかっているんじゃな いかな。まぁ、わかっていなくてもいいんだ。こっちは声を出して話すだけで、気分転換をさせてもらえるからね。 僕は彼らのことを、心の友と書き“心友(しんゆう)”だと思っている。動物はウソをつかない。信頼できるんだ。 みんなとリラックスして過ごす時間は、貴重だね」


ネコはちょっと人見知り

 ガッツさんは忙しい合間をぬって、時々ゴン太を散歩に連れて行きます。近所をひとまわりするだけのこともあり ますが、ガッツさんはこのときも、ずっと話しかけているといいます。話がしたくて、散歩に連れ出しているのかも しれません。

 「散歩に行くと、ネコがくっついてくるんです。ゴン太のことが大好きだからね(笑)」
 楽しいエピソードを話すガッツさんの目尻は、下がりっぱなしでした。

 
ガッツ石松   がっつ いしまつ

壁にかけてあったサイン入りのポスター。なつかしい!
1966年、ボクサーとしてプロデビュー。
72年に東洋ライト級チャンピオン、74年には世界ライト級チャンピオンに 輝き、連続5度防衛。78年にプロボクシング界を引退。以後、芸能界へ転身。『ブラックレイン』や『太陽の帝国』 をはじめ、数々の作品に出演。個性派俳優としての地位を確立。さらにバラエティー番組などでタレントをしても人 気を博している。
HP『OK牧場!』でも、ペットの写真を見ることができる。
http://www.guts-ishimatsu.com/

写真/北原 薫  取材・文/児玉伸子
(2001.02.22)