●犬は苦手なはずだったのに・・・・・・


寝るときも一緒。「アイツは大きなイビキをかくし寝ぼける。こっちはゆっくり寝ていられないよ(笑)」

 プロレスラー、俳優、イラストレーター、陶芸家……と様々な顔を持つ藤原喜明さんの愛犬は、マックスくん。今年1月7日に8歳の誕生日を迎えた、アメリカンピットブルテリアです。

 藤原さんは昔から、大の動物好き。しかし、子どもの頃に脚を噛まれたことが原因で、犬には苦手意識がありました。
「それが14、15年前、家内がペットショップで柴犬を買ってきたんだよ。やせこけた姿を見たら、放っておけなくなったらしい」

 飼い始めると、あまりのかわいさに藤原さんも夢中になりました。それから本を読むなどして、犬に関する猛勉強を始めたのです。そして、それを自分流に取り入れていきました。リキと名付けたこの犬は、言いつけをよく聞くいい子でした。

「でも、オレが飼うにはおとなしすぎた。もっと強い犬が欲しくなり、アイヌ犬を飼うことにしたんだ」

 こうしてアイヌ犬のリュウが、藤原家にやって来ました。リュウは気が荒く力が強いので、リキはよくいじめられるようになってしまい、そこでリキは知り合いに譲ることになりました。

 そんなある日、尊敬する空手家の先生・黒崎健時さんから「飼い犬に子どもが生まれたので、1匹引き取らないか」という連絡が入りました。その子犬こそ、今、藤原さんが愛してやまないマックスです。


散歩に行くときは、必ずスコップ持参

●マックスこそ、探し求めていた賢くて強い犬!

 実は、マックスの両親2匹とも、藤原さんが自分で飼うつもりでハワイから連れて来た犬たち。
「昔、私の先生でもあるレスラーのカール・ゴッチ氏が同じ種類を飼っているのを見て"いい犬だな"と思っていたんです」

 しかし諸事情で、オスを友人の石田隆造氏に、メスを黒崎さんに譲ったのでした。その犬たちの子であるマックスは、藤原さんにとって魅力的な存在だったに違いありません。リュウとうまくやっていけるか心配はあったものの、「どうにかなるだろう」とマックスを引き取ることに決めました。


車に乗るのが大好き。藤原さんが外出の準備をしていると、玄関で待ってるとか

 マックスとリュウは、最初はいいコンビでした。しかしマックスが成長すると力の差が大きくなり、一緒に遊ぶのは難しくなったといいます。
「今は、オレがいないときは2頭が顔を合わせないようにしている。そうでないと、リュウがズタズタにやられちゃうからね」

 マックスは四肢の筋肉が見事に盛り上がり、まさに精悍(せいかん)そのもの。

 「コイツは力が強い。噛む力も1トンあるんだ。よく小石を噛み砕いているよ。キケンなヤツなんだ。ケンカも強いんだけど、これは頭がいい証拠。ケンカっていうのは力だけでなく、スピードやタイミング、攻撃方法を考えることが重要だからね。マックスと生活したら、もう他の犬じゃ物足りないよ」
 たくましい我が子を誇るように、満面の笑顔を見せます。

●マックスのしつけは超スパルタ式
 藤原さんは、今まで飼ったどの犬も厳しくしつけてきました。なかでもマックスの教育には特別熱を入れています。
 「マックスは闘犬なので、人に危害を与えたらたいへんなことになってしまう。だから他の犬種以上に、しっかりしつけないとダメ。悪いことをしたら、ひっぱたいていい聞かせています。アイツは叩かれても3分すれば、ケロッとしている。すねたりしない、明るい性格なんだ」

 さっぱりした気性は、親分である藤原さん譲りなのでしょう。 

 もちろん叱りつけるだけではありません。言いつけを守れば、大いにほめてあげるし、時間が許す限り遊び相手なっているといいます。
 「マックスが今、いちばん気に入っているのは引っ張りっこ。ロープの端を噛ませて、引っ張り合うんだ。楽しくてしょうがないらしく、1時間くらいはやるよ」

 藤原さんは軽く言いますが、マックスがひっぱる力は半端ではありません。それを1時間も相手するには、生半可な体力では無理。マックスは、誰もが気軽に飼える犬ではないようです。
 散歩は1日に2回。自転車に乗る藤原さんの横を、マックスは本当にうれしそうに走ります。


さすが、組長! 綱ごとマックスを持ち上げる
●訓練士も驚いた、飲み込みのよさ!

かかりつけの獣医さんは元柔道選手で、体重130キロの巨漢!

 厳しく、そして深い愛情を注がれて育ったマックス。強いだけでなく、藤原さんの言葉通り、頭のよさも相当なものです。たとえば昨年、テレビ番組でアジリティー(犬の障害物競走)に挑戦したときのこと。当初は"10日間の訓練でできるようになるか"という実験でした。  しかし多忙な藤原さんは、なかなか時間が取れず、トレーニングしたのは5日間だけ。

「訓練士さんは無理だろうと言ったけど、マックスは完璧にこなしたんだ。その速いこと速いこと。コイツは、やるときはやるんだ(笑)。たいしたもんだよ」

 仕事でしばらく留守にして帰ってくる日には、ご家族が「今日、帰ってくるよ」と教えると、マックスは朝からずっと玄関で待っているとか。
「そういう話を聞くとうれしいね。やっぱり飼っていてよかった、なんて思うよ」
 目尻を下げる藤原さんを、マックスは「親分、僕も幸せだよ」というように見上げます。相性バツグンのタフなこのコンビは、誰も入り込めない強い信頼の絆で結ばれているようです。

ふたりは親分子分の間柄
 
藤原喜明 ふじわら よしあき
サラリーマン、板前を経て、1972年に新日本プロレスに入門。数々の名勝負でファンを魅了。「関節技の鬼」としても、脚光を浴びるようになる。90年に藤原組を旗揚げし、多くの門下生を育成。現在は、俳優としても活躍し、映画やドラマで独特の存在感を披露している。また陶芸やイラスト、盆栽でも非凡な才能を発揮している。
 
(2001.01.25)