国樹 由香・くにき ゆか
94年ソニーマガジンズの「パチ・パチコミック」にて『気絶するほど悩ましい』でデビュー。以後、愛犬を主人公にした『こたくんとおひるね』(小学館)、犬アンソロジーコミックス『犬っこ倶楽部ジュニア』(あおば出版)をはじめ、動物が主役の作品を多数送り出している。
国樹さんのHP『こたくんといっしょ』
http://www.kunikikuni.com/
撮影/前田光代  取材・文/児玉伸子
●新婚家庭に、新しいメンバーが加わった!

 動物漫画で大人気の国樹由香さん。同じく漫画家のダンナさま、喜国雅彦さんと結婚して10年。漫画業界では有名な、アツアツ夫婦です。

 ご夫妻とも、大の動物好き。とくに犬が好きで、新居は“犬と一緒に暮らしやすいところ”を基準にして探したといいます。
 引っ越し後、喜国さんは「犬を飼い始めると家を留守にしにくくなるから、その前に旅行をしておこう!」と提案。国樹さんも、賛成したのですが……
「そんなとき、知人から『動物のボランティア活動をしている知り合いが保健所にいる犬の里親を探しているんだけど引き取らないか』と電話をもらいました。飼い主が見つからないとその子の命は絶たれてしまうと聞き、即決したんです」。

 犬を引き取るに当たり、ボランティアの人が動物を飼える環境かどうかをチェックに来て、もちろん問題ナシ。そのうえ飼い主のふたりは家で仕事をするので、犬がひとりぼっちになることもありません。というわけで、すぐOKが出ました。
 こうして家にやって来たのが、ミックス犬の小太郎くんでした。
「保健所にいた子なので、年齢はわかりません。うちに来たときは、もう子犬じゃなかったですよ」。

 
●哀しみに押しつぶされないために

 小太郎くんは、愛称“こた”。決して愛想がいいタイプではないし、犬見知り(?)するものの、おだやかな性格。手がかからない頭のいい子でした。
 国樹さんの溺愛ぶりは、『こたくんとおひるね』という作品を描いたり、ご自身のHPを『こたくんといっしょ」と名づけたことからも、想像がつくでしょう。

「『めざましテレビ』の“きょうのわんこ”に出たこともあるんです。かわいくってかわいくって、そのビデオを1日50回見たことがあります(笑)」
 その姿を、喜国さんは半ばあきれながらも微笑ましく見ていたようです。


国樹さんの作品を読み、愛犬に“こた”と名づける人も多い。
 

 こたくんとの楽しい日々は、約9年続きました。しかし昨年11月に、彼は突然死してしまいました。
「いつも通り、散歩してごはんを食べて……。昼寝していたら、急に“キューン”と力のない声を挙げ、こときれてしまって……」。

 しばらくの間、国樹さんは、辛い現実を受け止めることができなかったといいます。そんな状況の中、半ばパニックになりながら、国樹さんはインターネットで里親を求めている犬を探し始めていました。

 

仕事をしている喜国さんの足元はかのちゃん、国樹さんの足元はくりくんの定位置。
国樹さんが2匹に望むことは、ただひとつ「長生きしてね」。

 溺愛していたこたくんの亡骸がまだ手元にあるのに、もう次の犬を探すのは不思議な気もします。でもそれは、ペットロスに陥らないための防衛策でした。
「哀しみが体の奥までしみこまないうちに、新しい家族を迎えなければ耐えられないと思ったんです」。

 探し当てたHPには、里親を求めているミックスの子犬たちが載っていました。その中には、こたくんとよくS似た子がいたのです。
「喜国さんに『見て、こたにそっくり。この子を引き取ろう』と相談しました」。
 喜国さんは、その犬が似ているとは思わなかったようです。それでもそのときはそれを口にせず、「こたがいなくなった穴は、1匹ではふさぐことができないよ。2匹引き取り、ひとり1匹ずつ面倒を見ようよ」と提案しました。

 こうして、こたくんに似た犬と、その弟を迎えることにしたのです。こたくんの死から3日目のことでした。

 
●時間がかかっても、ほめながらしつけたい

かのちゃんは、足先が真っ白。まるでソックスをはいているみたい。

こたくん似で、毛が黒い女の子はかの子ちゃん(愛称かの)。毛が茶色の弟は、くり丸くん(愛称くり)と名づけました。名前の由来は、ふたりを見て栗鹿子を連想したからだとか。
 かのちゃんとくりくんは、当時生後2か月。2匹も子犬が来ると、急ににぎやかになりました。
「こたを失いショックを受けている私を、かのとくりの存在が助けてくれました。それにたくさんの人が、私たちを励ましてくれたんです。あらためて周囲の人たちのやさしさを実感しました。今も、深く感謝しています」。

 こたくんはだいぶ大きくなってから来たので、国樹さんにとって子犬を育てるのは初めてのことでした。しかも、ミックス犬はどんな犬種が入っているかわからないので、将来はどのくらいの大きさになるか、そしてどんな性格になるかも予想できません。そこでどんな場合でも問題ないように、2匹をしっかりしつけることに決めました。

 
 「訓練士さんにも来ていただいています。もちろん、私たちもいろいろ教えてもらっています。お願いしている訓練士さんは、ほめながら学習させるという方針なんです。これは私たち夫婦も大賛成。叩いて教えれば5回で済むことも、ほめながらだと100回繰り返えさなければならない。気が遠くなりますよね(笑)。でもね、手間がかかっても、強い信頼関係を築けるんです。これは何物にも替えられませんよね」。
 

くりくんは、ふっくらした尻尾が何ともキュート。

 悪いことをしたら、感情的にならず「いけない」と注意し、いうことを聞いたら思い切りほめる。この教育法は、仕事のアシスタントさんたちに協力してもらい、みんなで実践しています。そのおかげで、かのちゃんもくりくんもいい子に育っている様子です。
「仕事の邪魔は絶対しませんよ。それに仕事が忙しいと、おとなしくしています。状況がわかるんですね」。

 また、夫婦だけで旅行ができるように、小さい頃からかかりつけの獣医さんに預けるようにしていました。
「最初は短い時間。獣医さんから大丈夫だったと聞くと、次はもう少し長い時間預け、次第にお泊まり保育もできるようになったんです」。
 時には、自分たちだけで楽しむ時間を持つことも、動物とうまくやっている秘訣なのかもしれません。

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