JRの日暮里駅、地下鉄千代田線の根津駅・千駄 木駅に囲まれた一帯、それが谷中。 お寺や路地、古い民家などが点在し、懐かしさが感じられる町だ。 そんな谷中には、今日もたくさんの猫たちが暮らしている。 飼い猫もノラ猫も、みんなのびのび過ごしている。 猫たちに会いたくなって、谷中に足を運んでみた。

日没までの 気ままな「猫に出会う旅」
 週末、ちょっと早めに目が覚めたら、小春日和のいい天気。
 そうだ、こんな日は谷中に猫に会いに行こう。目的も決めずにただブラブラして、猫に会えたら写真でも撮ろう。
 そう思ってカメラを抱え、電車に乗った。まずはJR山手線で日暮里まで行って、そこから気の向くままに歩いてみようか……。疲れたら喫茶店でお茶でも飲んで休めばいい。そして、日が暮れたら今日の旅はおしまいにしよう。
 猫も気ままなら、猫に会いに行くこちらも気まま。それが「谷中・猫に出会う旅」。

その1
谷中霊園
大東区立 朝倉彫塑館
開運 谷中堂
菅沼商店
永久寺
乱歩°
その2
ギャラリーふくふく猫
ギャラリー猫町
ねんねこ家
みぞぶち文具店
戸田文具店
夕焼けだんだん
インタビュー
桐谷エリザベスさん・逸夫さん

人慣れしているノラ猫たち
●谷中霊園
 日暮里駅を降りると目の前に広がっているのが谷中霊園。あまりにも広くて一歩入ると迷子になりそう。
 どこかに猫がいないかな……と期待しつつ左右を見ながら歩いていると、いきなり入口の脇の陽だまりにジーッと座っている猫がいる。「ニャア、ニャア」と鳴きまねをしながら一歩ずつ近づいても、いっこうに逃げる気配がない。
 そおっとカメラを向けてみる。でもやっぱり動じない。そこでこちらも安心してパチパチと何枚も撮ってしまった。
 ノラ猫は人が近づくと逃げ出すことが多いけど、ここの猫は人に慣れているのかな。誰か面 倒を見ている人がいるのかもしれない。谷中の猫は社交的?
 しばらく歩くともう1匹の猫を見つけた。この猫も人が近づいていっても微動だにしない。よく見てみると、ちょっと迫力のある顔。もしかしたら、これが噂の霊園のボス猫か。

DATA
(霊園事務所)
台東区谷中7-5-24
TEL/03-3821-4456
交通/JR日暮里駅すぐ

すぐに猫を発見。じーっとしたまま動かない。でも明らかにカメラを意識している様子
(「猫吉犬吉」2002.3月号)
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彫刻から猫との暮らしがしのばれる
●台東区立 朝倉彫塑館(あさくらちょうそかん)
 谷中霊園を出てブラブラと坂道を上っていると、モダンな建物を発見。ここは日本の近代彫刻の父・朝倉文夫のアトリエと住居がそのまま美術館として公開された「朝倉彫塑館」だ。
 まずは猫の彫刻作品が集められている「蘭の間」へ。大の猫好きだったという朝倉は、約20匹もの猫を飼っていて、新人の弟子が猫係として世話をしていたのだとか。お気に入りの猫は、狛犬のようにいつも両隣に座っていたそうだ。依頼主から注文を受けて創る一般の作品とは違い、自分の好きなように創った猫の作品にはアーティストとしてのこだわりと猫への愛情が伝わってくる気がする。
 朝倉自身が設計したという建物自体もすばらしいの一言! 昭和初期の西洋建築と数奇屋風の造りが、「朝倉流」に折衷されている。彫刻に関する空間は西洋風、住居部分は和風で、どちらも見学が可能。
 猫は自由気ままな存在。芸術家もまた同じ。朝倉はきっとそこに共通するものを感じ、惹かれたのだろうな、と思いつつ美術館を後にした。

DATA
台東区谷中7-18-10
TEL/03-3821-4549
開館時間/9:30〜16:30
休館日/月・金(祝日と重なる場合は翌日)、年末年始、特別整理期間
入館料/一般400円(300円)、小中学生150円(100円) ※( )内は20人以上の団体料金
交通/JR日暮里駅より徒歩3分
(「猫吉犬吉」2002.3月号)
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谷中で招き猫といえばここ!
●開運 谷中堂
 上野桜木方面へまっすぐ歩いていると、一軒の粋な店構えを見つけた。招き猫の看板が出ているこの店は「開運 谷中堂」。招き猫やおめでたいグッズがたくさんある。その中で「谷中小町」という招き猫を発見! よく見てみると、前掛けの柄が一つひとつ違う。説明書きによると「律儀でプライドが高い。こびない」性格なのだとか。谷中の人たちもそうなのかな? 今日の記念に買って帰ろう。
 とにかく招き猫の種類は豊富。「運勢上向き猫」(350円)、干支の絵が描かれた「干支招き猫」(12種、各800円)、12カ月分そろっている「誕生猫」(各800円)、選んだ色で精神状態がわかる「カラー占い猫」(各500円)などなど、見ていて飽きない。しかもオリジナル商品が多いから、谷中みやげにぴったり。
 オーナーはやっぱり猫を飼っているそうで、しかも谷中霊園で見つけたのだとか。谷中の人と猫は、切っても切れない関係なのだ。

DATA
台東区上野桜木2-13-5
TEL/03-3822-2297
営業時間/10:30〜17:00
定休日/月
交通/JR日暮里駅より徒歩9分
(「猫吉犬吉」2002.3月号)
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駄菓子屋の看板猫
●菅沼商店
 いま来た道を再び戻り、今度は大きな三叉路を千駄 木方向へと下る。この坂は「三崎坂」。「みさき」ではなく「さんさき」と読むのだという。
 ほどなく右手に懐かしい雰囲気の駄菓子屋が現われた。ここがロシアンブルーのモモコちゃんを飼っている「菅沼商店」。さっそく奥様のよし江さんにお願いして、2階にいるモモちゃんを連れてきてもらった。店先にいるとあまりにぴったりで、まるで映画のワンシーンみたい。「実は主人が亡くなってから、まだ間もなくて。それまでモモには『ごはんの時にはジジの所にいな』と言ってたので、今でもジジを探してるんですよ」と、よし江さん。ちょっと切なくなってしまったけど、よし江さんと一緒に看板猫としていつまでもがんばって、モモちゃん。

DATA
台東区谷中5-2-1
TEL/03-3821-1777
営業時間/午前中〜17:00
定休日/無休
交通/JR日暮里駅より徒歩7分

奥様のよし江さんとモモちゃん
(「猫吉犬吉」2002.3月号)
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仮名垣魯文の猫の供養碑
●永久寺
 「菅沼商店」からもうちょっと下って反対側に「山猫めをと塚」と「猫塚」がある永久寺が建っている。これは明治初期の戯作者・新聞記者である仮名垣魯文が飼い猫の供養に建てたものだそうな。飼い猫のためにわざわざここまでするとは、魯文も相当な猫好きだったに違いない。

DATA
台東区谷中4-2
交通/地下鉄千代田線千駄木駅より徒歩7分
(「猫吉犬吉」2002.3月号)
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ついつい長居してしまう
猫に会える喫茶店
●乱歩°
 永久寺を出てゆるゆると坂を下りると、途中になんとも味わいのある外観の建物が。年期の入った看板には「乱歩°」の文字。入口には「珈琲、ココア、林檎茶皆美味し」と書いてある。そうか、ここは喫茶店!しかもいろんな猫の絵が扉にかかっているということは、きっと店主が猫好きに違いない。ちょうど歩き疲れてきたところだし、ここらでちょっとひと休みしようか……。
 扉を開けると、店内は木のぬくもりが心地いい、落ち着いた雰囲気。そして、そこかしこに猫の絵やグッズが並んでいる。思い切って猫がいるかどうか尋ねてみると、ご主人の鈴木稔さんが2階から飼い猫の良介くんを連れてきてくれた。
 「実はこの良介は3代目なんです」と鈴木さん。これまで10匹以上の猫を飼ってきて、良介という名前は3匹目なのだそうだ。以前の良介と模様が似ているために、3代目に命名された。ビールが好きで、水も好きという、おもしろい猫。
 「本当は以前飼っていた桃子という猫が死んでから、もう飼わないつもりでいたんです」。しかし、上野で見つけてきて結局飼うことになったのだとか。今ではすっかりお店の人気者。でも良介くんは、普段は店内にはいない。猫が苦手なお客さんへの配慮だ。もし会いたかったら、鈴木さんに頼んでみよう。
 丁寧に淹れられたコーヒーを楽しみながら、気がつくと数時間も長居してしまう、そんな素敵なお店だった。

DATA
台東区谷中2-9-14
TEL/03-3828-9494
営業時間/10:00〜20:00
定休日/月(祝日は営業、翌日休み)
交通/地下鉄千代田線千駄木駅より徒歩4分


スタッフの松本さんに抱っこされる良介くん。店内には以前いた猫、桃子をモデルにした松本さん作の油絵がある
(「猫吉犬吉」2002.3月号)
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