ペットのこころをのぞいてごらん


 
「あの犬が矢筈台の捕獲器に捕まりました。3〜4日前のことです」

 6月の初めにサービスセンターから電話があった。あんなに警戒心の強い犬が捕獲器に捕まるなんて、ちょっと信じられなかった。家の横に置いてある大きな捕獲器のせいで、彼は二度と玄関に上がって来ることはなかったのだから。








 保健所に行った犬は3日間拘留される。その間に人に譲渡できる性格か健康かどうかを判別される。バツの犬は4日めに殺処分。

「あの犬は全身、疥癬にかかっていて、ほとんど、野生生物と変わらない感じだったですね」

 すっかり、野生犬になっていた白い犬。2カ月間エサをやり続けても一向になついてくれなかったため、私は専門家たちに相談したのだった。

「そんな犬、いったい誰が飼うの? 無理やり捕まえても一度逃げたらもう捕まらないよ。先のこと考えてみた?」





 


 答えは厳しいものだった。確かにそうだった。それで私はあきらめたのだ。そのうち、あの犬の苦情が殺到しているセンターが動きはじめたのだ。

 もしも、マリアが保健所へ連れていかれたらどうだろう。こんなことを考えてみざるを得なかった。きっと、マリアは職員に向かってシッポを振っているにちがいない。

 もう、あの犬が散歩に付いて来ることはない。「マリアにくっつかないで!」と怒鳴ることもない。でも、マリアはまだ彼を探している。

「どうしたの? 早く出ておいで」




■かわはら まりこ


画家・絵本作家、JAHA認定「家庭犬のしつけ」インストラクターの資格を持っていたことがある。

最新刊
「グルグル ぼくのだいじなおもいで」(偕成社)

作品に
「わたしから、ありがとう。」(岩崎書店)
「そめごろうとからす」「なかまってさいこうさ」(至光社)
「天国からやってきたねこ」(岩崎書店)
「子犬のワッハ」(講談社)
「やっぱり犬が好き。」(PHP研究所)
「はじめてのおわかれ」(佼成出版社)
「しあわせな離婚」(白亜書房)
「もしも、そばにいぬがいたら」(偕成社)
「こどもの世界6月号 ぼく ちっとも しらなかったんだ」(至光社)

ライター利岡裕子との共著に
「犬から学ぶ心のレッスン」 「犬たちがくれたおくりもの」(講談社)
「犬とつきあう本」「猫とつきあう本」「犬と話そう」(偕成社)
「さようなら、ありがとう、ぼくの友だち」(岩崎書店) がある。

(2010.06.24)