6月の初めにサービスセンターから電話があった。あんなに警戒心の強い犬が捕獲器に捕まるなんて、ちょっと信じられなかった。家の横に置いてある大きな捕獲器のせいで、彼は二度と玄関に上がって来ることはなかったのだから。
「あの犬は全身、疥癬にかかっていて、ほとんど、野生生物と変わらない感じだったですね」
すっかり、野生犬になっていた白い犬。2カ月間エサをやり続けても一向になついてくれなかったため、私は専門家たちに相談したのだった。 「そんな犬、いったい誰が飼うの? 無理やり捕まえても一度逃げたらもう捕まらないよ。先のこと考えてみた?」
答えは厳しいものだった。確かにそうだった。それで私はあきらめたのだ。そのうち、あの犬の苦情が殺到しているセンターが動きはじめたのだ。
もしも、マリアが保健所へ連れていかれたらどうだろう。こんなことを考えてみざるを得なかった。きっと、マリアは職員に向かってシッポを振っているにちがいない。 もう、あの犬が散歩に付いて来ることはない。「マリアにくっつかないで!」と怒鳴ることもない。でも、マリアはまだ彼を探している。 「どうしたの? 早く出ておいで」
画家・絵本作家、JAHA認定「家庭犬のしつけ」インストラクターの資格を持っていたことがある。 最新刊 「グルグル ぼくのだいじなおもいで」(偕成社) 作品に 「わたしから、ありがとう。」(岩崎書店) 「そめごろうとからす」「なかまってさいこうさ」(至光社) 「天国からやってきたねこ」(岩崎書店) 「子犬のワッハ」(講談社) 「やっぱり犬が好き。」(PHP研究所) 「はじめてのおわかれ」(佼成出版社) 「しあわせな離婚」(白亜書房) 「もしも、そばにいぬがいたら」(偕成社) 「こどもの世界6月号 ぼく ちっとも しらなかったんだ」(至光社) ライター利岡裕子との共著に 「犬から学ぶ心のレッスン」 「犬たちがくれたおくりもの」(講談社) 「犬とつきあう本」「猫とつきあう本」「犬と話そう」(偕成社) 「さようなら、ありがとう、ぼくの友だち」(岩崎書店) がある。